その日は突然やってきた。三田でのMTGが終わり、すっかり夜が早足になった街をとぼとぼと会社に戻ろうと慶応の前にさしかかった時ひとつの思いがこみ上げてきた。そう、食いしん坊として未だに足を踏み入れたことの無い未踏の領域「すきやばし次郎」じゃなくて「ラーメン二郎」だ。時間はちょうど17時前。早速三田本店へと足を向けた。夜の開店前だがすでに5人ぐらいの行例ができている。さて問題は頼み方だ。噂ではいろいろ聞いているがいざ店にくるとなんともいえない緊張感に体中が包まれる。ガラガラという音とともにシャッターがあがった。ひとりづつ食券の販売機で買うと奥から順番にカウンターにきれいに収まっていく。どんな注文をするのか大を頼むやつはいるのか、初心者であることをさとれないようにポーカーフェイスで券売機の動きをチェックする。しかしみんな黄色ばかりだ。。本店ではこれが掟なのか?誰もほかのメニューを頼まない!仕方が無いので私も黄色の小のぶた入りを頼もうとお金を入れた。しかし500円玉が何度入れても戻ってくる。まずい。まさかお札を入れるのが常識なのか?店内の全員の注目を浴びているような気まずい雰囲気だ。すると「お金はいんないですか?」店員さんがやさしく語りかけてくれた。なんだ優しいじゃないか。二郎は黙々と食べるところと聞いてたので店員さんがフレンドリーにしてくるとは予想外だった。両替をお願いし、黄色の札を取り出すとそれを握りしめ順番に席についた。さあこれであとは噂のコールを待つだけだ。すると私の後ろの人が離れた席に座った。いいのか!そんな序列を乱して!どうも大丈夫なようだ、思っていた以上にジロリアン達にはイスラムのような厳しい戒律があるわけではなさそうだ。しかしラーメンが出てくる順番とコールされる順番がバラバラだ。どういうことだ?麺の固さ?その方程式を解明できないうちにラブストーリーは突然のようにコールがきた。落ち着け。落ち着くんだ。よし。
「にんにく、野菜マシで」
できた。大丈夫だ。初心者とは思われない落ち着いた回答ができたはずだ。最大の難関を突破した。
直後にすぐにラーメンは目の前にきた。コールとほぼ同時のすごい早さだ。早速スープを一口飲む。懐かしい味がする。そうだ大学時代にアルバイトしていたフライト(今や上場企業)という会社でゲームソフト開発をしていた目黒のマンションのすぐそばにあった中華料理屋ではまって食べていた野菜たっぷりの焼きそばの味だ。何より麺が平たくてそっくりだ!当時は野菜だけを野菜炒めとしてライスと食べて、その後麺を食べていたが、この野菜と麺の感じがとても似ている。しかしチャーシューは正直多すぎる。大に挑むためには次回は豚なしがよさそうだ。店内はいつのまにか満席だ。女性のひとり客もいる。大を頼んだ人がいたのでさりげなくチェックしたが、なんとかいけそうだ。すでに次回の大への挑戦を考えているあたり私もジロリアンになれそうだ。さすがにスープは濃すぎて全部は飲み干せなかったが私の二郎初挑戦は無事に終わった。二郎の1800kカロリーを吸収した私の体にも三田の夜風はやや寒い。秋もすっかりマシマシだ。

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