小室哲哉が引退発表した。個人的には86年の「My Revolution」が一番大好きだ。その後のTMN時代も最高。その後90年代以降はRaveを日本で新しいJPOPの形にと進化させた功績は誰も否定できないだろう。そんな彼の今回の引退会見では色々なことを考えさせられた。

TM NETWORK / Self Control

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誰もが引退を自分で決める時代

小室も安室も氷室も引退の決め方は人それぞれだが,ミュージシャンは死ぬまでできる人もいる仕事なので決め時は難しい。彼はここのところ引退のタイミングを悩んでいたと語っているが我が敬愛する小田和正は70歳でもまだ「君を抱いていいの?」と歌っている。しかし昨年「LIFESHIFT」で話題になったように人生100年時代になり,これまでのように普通のサラリーマンでも60歳や65歳で定年退職での引退が許されない時代になりつつある。兼業,副業も当たり前になり多くの日本人が引退の時というのは自分で決めなければ行けない。自分がいつ仕事を引退するべきなのかは今後の我々の人生の悩める大きなテーマになるのだろう。

家族の理想像という呪縛

また彼が介護の大変さについて赤裸々に告白したことも話題になっている。「家族を介護しているのに!」「家族が闘病中なのに!」というところは責めるすきを与えた時に責める人にとっては恰好の材料だ。しかし,母親と子供という一番繋がりが強いはずの家族ですら母親なんだからという家族の強要は時として母親を苦しめることになる。理想的な家族像というものが我々社会の多くの人を苦しめているのではないだろうか。夫婦も親子ももっと多様なあり方を許容できる社会こそが求められているのではないかと私は考える。これまでのように恋愛をして,結婚して,子供を育てる,その後一生全員で愛しあうという理想型としてお見合い結婚から恋愛結婚の数が半数を超えたのはたった50年くらい前だ。今後は婚姻制度によらない新しい家族の形が増えるだろう。子供の育て方も介護などのセーフティネットも多様性が求められる。自分達で理想の姿に縛られれば,それは結局自分達自身を縛ることになるのではないだろうか。

ジェラシービジネスとしての文春砲

文春砲ともてはやされた文春も今回は非難する人も多い。確かにジャーナリズムとして巨悪を糾弾する役目も果たしてはいるだろう。しかし,それも結局は「自分よりも羨ましい人生を送っている人が悪いことをしたから責めてやろう!」というジェラシーの感情を満たす役割でもあるわけだ。私がリスペクトする脳科学者の中野信子先生は「シャーデンフロイデ」という脳内物質の現象で人類の知恵でもあると科学的に説明している。つまり,同じ価値観の仲間から外れる行動したものを排除したいということでもあるのだろう。

今年は明治維新から150年。富国強兵というシンプルな戦略に基づき,我々庶民も武士のようなストイックな精神を強要されてきた。真面目に生きて,他人と同じような行動をして頑張れば社会がどんどん成長するから幸せになれるとされたのだ。一度敗戦という失敗をしているが基本的にその行動で社会は成長してきた。しかし高度経済成長が終わりバブルが弾け停滞期になり,真面目に生きることを求められるがその結果は決して幸せでは無いという状況が多数生まれ,格差も広がりつつあり,崩壊する中流のヒステリーはカルデラのマグマだまりのようにジェラシーの大きなエネルギー供給源になっている。そのためより公人や成功者であればあるほど修道院のようにストイックに生きることを庶民は求め,道を踏み外したものをさらしものとすることに「シャーデンフロイデ」としての快感を求めているのだ。文春のビジネスモデルはまさにこの快感を提供し,ソーシャルメディアの普及とともにそれを増幅装置として活用している。

渡辺美里 My Revolution

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「Selfcontrol」から「My Revolution」へ

今我々に必要なことは社会の規範のように真面目に生きて,人と同じように収入を得て,結婚して子供を育てなければいけないという「Selfcontrol」の呪縛から開放され,他人がどうであれ自分が楽しいと思える生き方を毎日行うという価値観への「My Revolution」が必要なのではないだろうか。それは150年の明治政府の洗脳から解放され,プライドの塊に支配された武士の「Selfcontrol」では無く,毎日楽しい日々を過ごした江戸庶民の生き方にヒントがあるかも知れない。日本の自殺率を下げ,恋愛をしたい時に自由に謳歌し,地域のシェアリングエコノミーのコミュニティで生活を支え合い,美味しいものを自分で育てて食べるという当たり前のことをテクノロジーの力も借りて実現するべきだろう。我々ひとりひとりの「My Revolution」できっといつかまた何事もなかったかのようにステージにあがる小室哲哉を我々は待ち続けようではないか。

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